- 僧帽弁逆流量とは
- 僧帽弁逆流量の評価法
- Volumetric法の計算法
- Volumetric法の利点
- Volumetric法の注意点
- Volumetric法の制約
- Volumetric法の簡単な計測方法
- 使い方
僧帽弁逆流量とは
僧帽弁閉鎖不全症の症例において僧帽弁逆流量は本疾患の進行や重症度・予後を予測する上で重要な検査項目の一つです。僧帽弁逆流量の評価法には主観的評価法と半定量的評価法、定量的評価法があります。
僧帽弁逆流量の評価法
主観的評価法:左心房拡大、カラードプラ検査
半定量的評価法:僧帽弁逆流の到達距離、逆流ジェット面積 / 左房面積比
定量的評価法:Volumetric法、Proximal Isovelocity Surface Area(PISA)法
Volumetric法の計算法
超音波検査
超音波検査では右側横臥位に保定して、長軸断面を描出し収縮早期の左室流出路(大動脈弁輪部)径を計測します。次に、左側横臥位に保定して、長軸断面を描出し拡張中期の僧帽弁弁輪部の短径と長径を計測し、僧帽弁血流波形から時間速度積分値(VTI)を計測します。最後に、同断面から左室流出路の血流波形を記録し、VTIを計測します。
計算式
Volumetric法を用いた僧帽弁逆流量の計算には僧帽弁弁輪部の面積と僧帽弁血流のVTIから左室一回流入量を求め、次に左室流出路面積とVTIから左室一回拍出量を求め、これらの差から逆流量を算出します。
- 左室流入血流量= π×僧帽弁輪の長径/2×僧帽弁輪の短径/2×僧帽弁血流のTVI
- 左室駆出血流量= π × (左室流出路の直径÷2)2× 左室流出路のTVI
- 逆流量= 左室一回流入量 - 左室一回拍出量
僧帽弁逆流率(%)=逆流量(cm3)÷左室流入血流量(cm3)
Volumetric法の利点
正確な容積測定:心臓の各部分の容積を正確に測定できるため、僧帽弁逆流の重症度を評価するのに役立ちます。特に、複数の逆流ジェットがある場合には、PISA法よりも正確に逆流量を把握することができます。
定量的な評価:Volumetric法は僧帽弁逆流量を定量的に求められ、僧帽弁閉鎖不全症の血行動態を把握する事ができます。
僧帽弁逆流率:逆流量を左室流入血流量で除することで、僧帽弁逆流率も求められます。犬では犬種や体格差の影響を最小限に抑えて評価できるようになります。
人医療では逆流率 30%以下が軽症,50%以上は重症と評価されます1)
Volumetric法の注意点
過小評価:有意な大動脈逆流を有する症例では僧帽弁逆流量を過小評価するため注意が必要です。
乖離:心機能が低下している症例では、前方拍出量が小さいために計算上の逆流率が大きくなります。このため逆流量と逆流率の乖離がしばしば生じることに注意が必要です。
Volumetric法の制約
複雑な計算: Volumetric法の計算は上記のとおり複雑なので、計算に時間がかかり通常の診療ではなかなか使用できません。
解釈の難しさ: 測定結果の解釈には専門知識が必要であり、また、犬の体格は幅が広いので逆流量を算出しても単一基準で判断できません。
でも、AniCulatorなら簡単にできますっ!!
Volumetric法の簡単な計測方法
AniCulatorでは逆流量と逆流率を同時に算出でき僧帽弁逆流の重症度を迅速に評価できます。また、逆流率が表示されるため、犬種(体格差)の影響を最小限に抑えた判定を行えます。
使い方
AniCulatorの「検査」から「Volumetric法」を選択してください。
僧帽弁血流のVTI、僧帽弁輪の短径と長径、左室流出路のTVIと流出路径を入力するだけで、計算結果が表示されます。
AniCulatorはこちらからインストールできます(現在はiOSのみの配信です)。