持続点滴薬とは
持続点滴薬とは一定の速度で連続的に静脈内に投与される薬のことを指します。これは、心不全やてんかん重責発作、血栓症治療などの緊急治療や全身麻酔や鎮痛薬など持続的な効果を必要とする治療に用いられます。通常はシリンジポンプと呼ばれる特殊な点滴装置を使用して薬剤を投与します。
持続点滴薬の種類と用量
持続点滴に用いられる薬には、以下のような薬剤が挙げられます。
心不全治療薬
- ドブタミン:3~10 μg/kg/min
- ドパミン:3~10 μg/kg/min
- カルペリチド(hANP):0.05~0.1 μg/kg/min
- フロセミド:0.1~1.0mg/kg/h
- ミルリノン:
抗不整脈薬
- プロカインアミド:10~40 μg/kg/min(犬)
10~20 μg/kg/min(猫) - リドカイン:30~80 μg/kg/min(犬)
10~40 μg/kg/min(猫) - エスモロール:10~200 μg/kg/min(犬)
50~20 μg/kg/min(猫)
麻酔薬
- プロポフォール:0.3~0.8 mg/kg/min
- ミダゾラム:0.05~0.5 μg/kg/min(麻酔維持)
- フェンタニル:5~10 μg/kg/min(麻酔導入時)
0.1~0.5 μg/kg/min(麻酔維持)
鎮痛薬
- フェンタニル:10~45 μg/kg/h(犬 術中鎮痛)
10~30 μg/kg/h(猫 術中鎮痛) - レミフェンタニル:20~60 μg/kg/h(犬 術中鎮痛)
10~30 μg/kg/h(猫 術中鎮痛)
その他
持続点滴薬の計算方法
持続点滴薬は、①体重、②薬剤濃度、③希釈調整後の薬液量、④薬用量を基に点滴流量(単位時間[h]当たりの投与量[m])を計算します。
例えば、①3kgの犬に、②薬剤濃度20mg/mlの薬剤A(1ml)を、③20mlに希釈して、④5μg/kg/minで点滴する時には何ml/hで流せばいいかを計算します。
Step1 希釈調整後の薬液濃度を求める
薬剤Aの濃度(mg/ml)×使用量(ml)÷希釈後の薬液量(ml)
薬液濃度=20mg/ml×1ml÷20ml=1mg/ml
Step2 薬用量から症例の体重に合わせて1時間に使用する薬剤量を求める
薬用量 (5μg/kg/min)×体重(kg)=15μg
薬剤量=15μgは1分間の使用量なので、1時間に換算するために60倍する=900μg
Step3 薬液濃度と薬剤量から1時間に使用する薬液量を求める
薬液量=薬剤量(900μg)÷薬液濃度(1mg/ml)
ただし、単位の統一が必要なので900μg÷1000μg/ml=0.9mlとなる
つまり、1時間に必要な点滴量は0.9ml/hとなります。
持続点滴薬を計算する際に困る事
もうお分かりだと思いますが、持続点滴薬の計算は使用する因数が多く、さらに単位の換算も必要なことから計算する際に以下のような経験はありませんか?
- 計算が複雑なので、持続点滴薬の計算にストレスを感じる
- 急患なのに計算が複雑で治療開始までに時間がかかってしまう
- 劇薬を扱うので、計算ミスが不安
- 計算が複雑だから持続点滴薬を使いたくない
持続点滴薬の計算は臨床上もっとも複雑で責任が重く、そして迅速な計算が求められるため、多くの臨床医が敬遠しがちな治療となっています。
緊急治療を開始したくても計算するだけで多くの時間を消耗しては意味がありません。また、持続点滴薬に使用される薬剤の多くは劇薬であり、計算ミスは本当に命取りになりかねません。
持続点滴薬の簡単な計算方法
AniCulatorでは
①体重、②薬剤使用量*、③希釈調整後の薬液量、④目的の点滴流量を入力するだけで、薬剤の用量が算出できます。
*薬剤使用量は薬剤の濃度×使用量(ml)から事前に計算する必要があります。
計算結果が目的の用量と異なっている場合には、②~④のいずれかを変更し、再度計算しなおしてください。
③希釈調整後の薬液量は使用するシリンジのサイズによって決まるので、②か④を調整することを推奨します。
AniCulatorはこちらからインストールできます(現在はiOSのみの配信です)。