僧帽弁逆流量(PISA法)の計算法
僧帽弁逆流量とは
僧帽弁閉鎖不全症の症例において僧帽弁逆流量は本疾患の進行や重症度・予後を予測する上で重要な検査項目の一つです。僧帽弁逆流量の評価法には主観的評価法と半定量的評価法、定量的評価法があります。
僧帽弁逆流量の評価法
主観的評価法:左心房拡大、カラードプラ検査
半定量的評価法:僧帽弁逆流の到達距離、逆流ジェット面積 / 左房面積比
定量的評価法:Volumetric法、Proximal Isovelocity Surface Area(PISA)法
PISA法の計算法
超音波検査
超音波検査では左側横臥位に保定して、長軸断面を描出し僧帽弁逆流血流とPISA半径を計測しておきます。PISA半径を求めるには折り返し(aliasing)速度を約40cm/sに設定してください。
計算式
Step1 逆流口面積を求める
逆流口面積=2π×PISA半径2×折り返し速度÷僧帽弁逆流速度
Step2 僧帽弁逆流量(ml)を求める
僧帽弁逆流量=逆流口面積×速度時間積分値(MRVTI)
PISA法の利点
計測が容易:Volumetric法に比べると計測項目が少なく容易に計算できます。したがって、器質性(1次性)MRで逆流弁口が限局している場合にはPISA法の方が便利です。
大動脈逆流の影響を受けない:PISA法は僧帽弁逆流量を大動脈弁逆流の有無に関係なく簡単に求められ、僧帽弁閉鎖不全症の血行動態を把握する事ができます。
PISA法の制約
計算が複雑:PISA法の計算は上記のとおり複雑なので、通常の診療ではなかなか使用できません。
結果の解釈が困難:犬の体格は幅が広いので逆流量を算出しても単一基準で判断できないことも獣医療に浸透しない理由かもしれません。
過小評価:複数のMRジェットがある場合に、ひとつの吸い込み血流を用いて計算するだけでは逆流量を過小評価してしまうことに注意が必要です。
計算が複雑で、臨床応用しにくいと感じられるPISA法ですが、AniCulatorなら簡単に計算できますっ!!
PISA法の簡単な計測方法
AniCulatorでは最低限の必要項目を入力するだけで、逆流量を算出できます。
また、逆流量を標準化し、犬種(体格差)の影響を最小限に抑えた判定を行います。
使い方
AniCulatorの「検査」から「PISA法」を選択してください。
- 体重を入力します。
- PISA半径(mm)を入力します。
- Alias Vel:折り返し速度を入力します。
- MR Vel:僧帽弁逆流速度を入力します。単位に注意してください。
- MR VTI:僧帽弁逆流の速度時間積分値を入力します。
- 確定ボタンをクリックすると画面の上段に計算結果が表示されます。
AniCulatorはこちらからインストールできます。
(現在はiOSのみの配信です)