標準化左室拡張末期径(LVIDDN)の計算法
心拡大は重要な指標
左心不全犬(特に僧帽弁閉鎖不全症)では左心室が拡大するため、左心室拡大の有無は重症度や治療の判断に重要な意味を持ちます。
しかし、犬の体重は約2kgの小型犬から50kgを超える超大型犬まで幅広く分布しています。左心室の大きさは体重に強く依存しており、心エコー図検査を用いた計測値(例えば左室拡張末期径=3.3㎝)をみても心拡大の有無は判断できません。
犬の心拡大を評価するためには体格の影響を最小限にする必要があり、これまでに様々な指標が考案されています。
犬の心拡大の評価法
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LVIDd/BW:左室拡張末期径を体重で除した指標
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LVIDd/Ao:左室拡張末期径を大動脈径で除した指標
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RWT:心室中隔壁と左室自由壁の合計を左室拡張末期径で除した指標
*Relative Wall Thicknessの頭文字をとって名付けられている。
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LVIDDN:左室拡張末期径を体重の0.294乗で除した指標。
*2019年にACVIMガイドラインに記載されたことで世界的な標準的指標となった(1)。
LVIDDNの計測法
LVIDDNの利点と欠点
LVIDDNの利点は
1.7を超えている際に体重に関係なく左心室拡大があると判断できることです(1)。さらに、世界的に皆が使っている解りやすい指標なので、解りやすいことが挙げられます。
LVIDDNの欠点は
分母に体重を使用するため脱水、削痩、肥満などによる体重変化が結果に影響し、心拡大を過小評価・過大評価してしまうリスクがあります。でも世界的に皆が使っている解りやすい指標なので、細かいことは気にせずに使用されています。
もう一つの欠点は指数を使った計算のため、通常の計算機では計算できなくなりました。
臨床現場ですぐに使えなければ意味がありませんよね…。
簡単にLVIDDNを計算する方法
AniCulatorはこちらからインストールできます。
(現在はiOSのみの配信です)
- Keene BW, Atkins CE, Bonagura JD, Fox PR, Haggstrom J, Fuentes VL, et al. ACVIM consensus guidelines for the diagnosis and treatment of myxomatous mitral valve disease in dogs. J Vet Intern Med. 2019;33(3):1127-40.